分散型チーム間のつながりを構築する
著者であり、未来の働き方のコンサルタントでもあるBrian Elliottが、物理的そしてバーチャル的に組織がつながりを改善できる方法について掘り下げます
著者:Brian Elliott
2024年2月29日
5 minutes
私たちは分散して働く時代に生きています。大多数のチームが、建物のフロアだけでなく、複数の地域に分散しています。たとえばMicrosoft社の場合、以前はチームの61%が同じロケーションで仕事をしていましたが、パンデミック後は66%が複数の都市に分散しました。チームとのつながりを求めて、従業員にオフィス勤務に戻るよう要求することは、もはやこの新しい時代には適合しません。
戻ってきたとしても、もはやオフィスが自分のニーズを満たさないことに気づく従業員も多いでしょう。一列に並んだデスクや会議室はほとんど使われず、備品の多くは人間工学に基づいて設計されていないため使いづらい、チームのワークショップや集会スペースは予約が困難な状況です。
ですが「バーチャルだけではうまくいかない」。これはリモート勤務優先の企業に、チームをまとめることができなかったパンデミック期間中の様子を尋ねてみた回答です。チームのつながりを構築する必要がある時期であるにも関わらず、多くの企業が出張予算を削減しています。
この先、どうなるのでしょうか。
チームのつながりを構築する
物理的な集まり
チームレベルの集まりは、互いのつながりを深め、健全なチームと従業員エンゲージメントを構築するために不可欠です。ソフトウェアプロバイダーのAtlassian社が同社のチームを調査したところ、四半期ごとに集まるチームにおいては従業員エンゲージメントが著しく向上し、その状態がおよそ4~5か月間は維持されたことがわかりました。
次のようなコンセプトが、ベストプラクティスだと言えます。
最小限のガードレールとして、すべての従業員がチームや部門別グループ、または会社に属していることを実感できるよう、少なくとも四半期ごとに集まる。
年2回の部門ごとのチームの集まりを、年2回の部門横断的なチームの集まりへと変更する。
四半期ごと、または頻度が低い集まりの少なくとも50%が「社交的」な性質、たとえば、チームビルディングのためのエクササイズ、食事会、ボランティア活動のようなものであることを確認する。
オンサイトは新しいオフサイトと考え、社内でイベントなどを開催する。最近のMillerKnollの調査でもこのエビデンスは確認され、過去2年間の当社の別の拠点への出張が、顧客を訪問する出張とほぼ等しくなっていることがわかりました(それぞれ35.5%と36.1%)。ですが、依然としてコンベンション会場やホテル会場への出張が多数を占めています。同じ調査で、「会議」よりも「イベント」の場合に従業員の出張願望が高まるというエビデンスも示されています。
バーチャルなつながり
チームのつながりに関するベストプラクティスの多くは、書籍『How the Future Works』 で紹介されていますが、これらはオンラインまたは対面で実施可能です。働き方のスタイルや望ましい労働時間、背景など、自分の取扱説明書のようなものを共有したり、皆が打ち解ける方法を使ってスタッフミーティングを開始するというコンセプトは、場所に関係なく機能します。
また、物理的な空間のデザインとそれをどのように使用するかを考えることも重要です。肩書が上の者が片側に座り、反対側の端にスクリーンが設置されるような従来型の長い長方形のテーブルは、部屋の中にいる全員に目を配ることが可能で、オンラインでつながっている全員が平等に話を聞けるような設定に置き換える必要があります。これは、大規模なグループセッションの場合には、複数のスクリーンやマイク、カメラを準備することを意味します。
さらに、従業員には2世代のデジタルネイティブが存在しており、リーダーは若いチームメンバーにアイデアを求めることができますので、ぜひ実行してください。
弱い結びつき(ウィークタイズ)を構築する
柔軟なワークスペース
オフィスを再設計するうえで、「成り行きを見守る」のが正解である段階はとうに過ぎています。米国では、オフィスの利用状況は企業の職場ポリシーの平均とほぼ一致しており、パンデミック前の約半分になっています。カナダ、英国、オーストラリアでも同様の傾向です。他の国ではそれほどではありませんが、MillerKnollの調査によると、インドや日本のような国でも、フルタイムでオフィスに出勤している企業は(それぞれ)61%と63%にすぎません。
オフィスの主な役割は、個人が仕事をする場所から、コラボレーションとつながりを構築する場所へと変わりました。変化するチームの要求に柔軟に対応できて、チーム内やチーム間の何気ない出会いや会話を促進できる、よりインタラクティブなスペースが必要です。
バーチャルで絆を結ぶ
興味に基づいた仮想コミュニティは、チームや部門間のつながり、つまり私たちが見逃してきた穏やかで、いくぶん弱い結びつき(ウィークタイズ)を構築する優れた方法です。Microsoft TeamsやSlackなどのツールを使えば、組織全体で活用できる会話チャネルが構築できます。
いくつかの例:
従業員のリソースグループ
グループメンバーが互いにつながり、サポートし合えるチャネルは、ローカルでは小規模すぎるが、グローバルでは大規模すぎるという多くのグループにとって非常に重要です。
個人的な興味
興味といえば「猫派」か「犬派」というのが定番ですが、他にもたくさんあります。たとえば、ある従業員がニューヨークシティに住む5人の友人向けに熱狂的なスニーカーコレクターチャネル「スニーカーヘッズ」を立ち上げたところ、急速に広まり、最終的には世界中のオフィスにいる何百人もの従業員とつながりました。
仕事のトピック
従業員に、ビジネスに関連するトピックについて読んだり、見聞きしたりした内容を共有するよう奨励すると、多様なグループや視点横断的な新しいアイデアが生まれる可能性があります。
個人的なつながり
ローカルそしてグローバルなコミュニティを強化することは、従業員と会社とのつながりはもちろん、部門間の弱い結びつき(ウィークタイズ)を構築できる優れた方法です。ローカルオフィスで週に1度の食事会を開催するだけではなく、グループでのボランティア活動は地域社会への関わりを奨励します。勤務時間後の交流だけではなく、さまざまな部門やリーダーが主催するランチ持参の集まりやオフィスでの教育プログラムなど、従業員が価値を見出すプログラムを考えてみましょう。
では、従業員が20人以上いる地域にオフィスがない場合は、どうすればよいでしょうか。ローカルでチームの集まりを行うよう奨励し、これを支援しましょう。社会的基盤の構築をサポートする、ローカルの「コミュニティマネージャー」を任命し、エグゼクティブの出張に合わせて集まりを実施するなど、つながりの構築を促進します。
分散して働く環境に住み慣れた今、後戻りはできません。デジタルツールとバーチャルコミュニティは、つながりを構築する上で引き続き重要な役割を果たします。また、この分散型の未来、そして現在における私たちの目的に、今ある物理的空間が適しているかどうかを検討する時期でもあります。
著者について
Brian Elliottは、スタートアップ企業のCEO、Googleのプロダクトリーダー、Future Forumのエグゼクティブリーダーを歴任し、30年間にわたりチームを率い、企業の構築に携わってきました。彼は最近、未来の働き方についてリーダーにアドバイスを提供するMcElliott Advisorsを共同設立しました。彼は、Harvard Business Review、Fortune、The Economistなどの出版物に、仕事に関連するさまざまなトピックを執筆しており、以下の本の共著者でもあります。How The Future Works:Leading Flexible Teams to Do the Best Work of Their Lives (© 2022, Wiley).